ピンカス・ズーカーマンのコンサート談

Posted By on 2013年6月2日

5月19日(日)、ピンカス・ズーカーマンのコンサートに行ってきました。
先生も同じコンサートを聞きに行っていたとのことで、
感想を聞いてみました。

先生の第一声は「若々しい、いい演奏だった」とのこと。
豊かな音量で、ヴァイオリンの響きを最大限に引き出す技術とその音色は、
若い頃と変わらず素晴らしかったとおっしゃっていました。

ヴァイオリンに携わる者は皆、
一度はズーカーマンの出す音の大きさに憧れるのだそうです。
それが健在で、嬉しかったとも。

ただ、私にとっては、
音量も音色も、ほ〜っっとため息が出るほどすばらしかったのですが、
何となく「こなしている感」が感じられて、
思いっきりファンになるまでにはいきませんでした。

大御所だからかな、と思ったのですが、
同じ大御所であるパールマンやギドン・クレーメルなどには感じなかったので、
その疑問を先生にぶつけてみたところ、

「ズーカーマンは、音を完全にコントロールできるからではないか。
こうやって弾けば、こういう音が出る、というのを知っていて、
しかもそれを思ったとおりにできる。

プロの料理人が、同じ味の料理をいつも提供できるように、
同じ演奏をいつでも弾けるというのは、非常に高い技術があってこそ。
それをさらりとできるところがすごい。

ただ、すごく高度な技術を要する曲でも苦もなく簡単に弾けてしまうので、
それが『こなしている』ように聞こえてしまうのかも」

とのことでした。

ではなぜ、ズーカーマンは他の人より大きな音が出せるのでしょうか?

それは、とにかく「弓を弦に垂直に当てている」から、だそうです。
垂直に当て、音をキャッチしてリリースするタイミングが
真似できないほど絶妙だということです。

楽器のせい、と思われがちですが、
先生が大学のオケでズーカーマンから指導を受けたときに、
安物のヴィオラで弾いたときも同じくらい大きな音量を出していたそうなので、
楽器ではなく、ひたすら弓使いが抜群に優れているからだということでした。

大きな音に、なぜ憧れるのでしょう?

その理由の一つとして、
それほど音量が大きくないヴァイオリニストが協奏曲を弾くとき、
オケの人数を減らすことがあるが、
ズーカーマンのように大きな音量が出せれば、
オケの人数はそのままでよく、それだけ迫力のある演奏が可能になる、
ということを挙げてくれました。

ヴァイオリンを本格的にやっている人は、
一度は大きな音量を出すことに憧れ、
そのままその方向で進んでいく人もいれば、
別の方向へ進んでいく人もいるようです。
前者の最高峰の一人が、ズーカーマンです。

ハイフェッツやミルシュタインなどは、
物理的に大きな音量ではなかったとしても、
たとえばメリハリのある弾き方をすることで
音量としてはmfでもffのように聞かせます。
曲の表現方法は、本当に多種多様です。

近々、チョン・キョンファとアンネ=ゾフィー・ムターの
コンサートにも行く予定です。

アンネ=ゾフィー・ムターは昔ながらのヨーロッパ系(ドイツ系)の
弾き方をするので、また違った演奏が聞けるだろうとのこと。

楽しみです。

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