銘器、ニューヨーク・スタインウェイ≪CD75≫を最高の状態で聴くことができました。
CD75は巨匠ホロビッツの専用ピアノとして知られ、現在まで数々の演奏会や録音で活躍しているピアノです。
長年の希望が一つかないました。
ピアノの音色についての基準といえる演奏を聴くことができたのです。
ピアノの基準の音 ニューヨーク・スタインウェイ≪CD75≫を聞く
ピアノという楽器は構造上、人が聴く位置に向けて音が放射されていません。
演奏者の目の前に弦があり直接音が鳴り響いているのに、実際に演奏を聴くときにはほとんど間接音という、珍しい楽器です。
とはいえ、どの場所で聴いても一様に問題なく聞くことができるので、聴く位置についてはあまり問題になりません。
ところがいざ収録となったら話は大違い。
使用するマイクに始まり、設置場所や本数、収録方法、会場や奏者によって、見事に音色が変化します。
変化するのはよいのですが、さて、どの音を収録すればよいのでしょう。
単によい音色だけを録ればよいという物でもありません。
あたかも、会場で聴いているような臨場感を収録したい場合もあります。
奏者やピアノの実力?を収録したい場合もあります。
ここで問題が発生します。
その、それぞれの希望する音色についての基準がないことです。
エレクトリック系のように自分で勝手に作り上げることはできません。
あるのは、対象の楽器をとにかくよい音でとる、という漠然な希望だけです。
本来ならここで、奏者なりプロデューサーなりがその音を聞き判断するわけですが、
その肝心の当事者ですら、ピアノの実力を聴いたことはないのです。
限りなく漠然とした、経験した中での最高の音でしかないのです。
そして収録する技術屋はそこに口をはさむこともできません。
クラシックは生の音を聞く芸術で、マイクで収録した音は対象外という見方が根強いのです。
ライブで聴いた音よりもCDで聴いたほうが、はるかに素晴らしい臨場感と感動を味わえることになっては困るわけです。
加えて、さらに名器と呼ばれるピアノがあるのですが、そんな楽器は生で聴く機会も、
ましてや自身の手で収録する機会など一介の技術屋にあるわけがありません。
そうするとCDや、ビデオなどで聴くことになってしまうわけです。
先に述べたとおりピアノの収録は録り方次第で千差万別です。
普通のピアノとどこがどう違うかなど想像もつかなくなってしまうのです。
そんなこんなで、何十年ももやもやしてきた中での今回のピアノリサイタルです。
最高な状態に調整された最高のピアノ、そして新進気鋭な将来有望な若手ピアニスト。
で、まずは、全体の感想ですが
会場は、実際に行ってびっくり、かなり狭目のL字型。
会場そのものには不安がありますが、私の、
「ピアノがピアノらしく鳴り響くベストな場所はサロンだ」という持論の確信が持てました。
またL字型は独特のチャンバー(膨張室)効果があり豊かな残響が得られる場合があるのでそれも良しです。
背後のガラスの扉固有の癖と、雨中の車の走行音は目をつむりましょう。
リサイタルそのものはとっても面白いおもちゃを与えられて大はしゃぎの子どもと、それを見守るおじいちゃんという感じでした。
微笑ましいのですが感動はありませんでした。
なにぶん格闘中なのでした。
まあ技術的にも、多分芸術的にも申し分のない方のようなのでので将来が楽しみですね。
で肝心のピアノについては、次回
ピアノの基準の音 ニューヨーク・スタインウェイ≪CD75≫を聞く
ピアノの基準の音 ニューヨーク・スタインウェイ≪CD75≫を聞いて
ピアノの基準の音 ニューヨーク・スタインウェイ≪CD75≫風
反田恭平 ピアノリサイタル
《CD75》に選ばれたアーティスト 反田恭平 20歳の挑戦
●日時:2014年9月1日(月)19時開演(18時半開場)
●会場:タカギクラヴィア松濤サロン
●使用ピアノ:1912年製スタインウェイ《CD75》