チョン・キョンファ(vl)
J.S.バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会
2017年1月28日の鑑賞のイベント情報です。
ヴァイオリン界のレジェンド、楽壇デビュー50周年プロジェクトの第1弾として、バッハの無伴奏ソナタ&パルティータ全曲を披露。
公演タイトル | J.S.バッハ:無伴奏ソナタ&パルティータ全曲演奏会 |
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公演日時 | 2017年1月28日(土)12:00開演 |
会場 | サントリーホール 大ホール |
出演 |
チョン・キョンファ |
演目 | J.S.バッハ: ソナタ 第1番 ト短調 BWV1001 パルティータ 第1番 ロ短調 BWV1002 ソナタ 第2番 イ短調 BWV1003 パルティータ 第2番 ニ短調 BWV1004 ソナタ 第3番 ハ長調 BWV1005 パルティータ 第3番 ホ長調 BWV1006 |
チョン・キョンファ | |
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各種表記 | |
ハングル: | 정경화 |
漢字: | 鄭京和 |
発音: | チョン・キョンファ チョン・ギョンファ |
欧文表記: | Kyung-Wha Chung |
レビュー:
前回聴いた演奏があまり好きではなかったので、今回は、実はあまり期待していませんでした。ところが、実際に聴いてみたら、とてもパワフルで、情熱的で、魂がこもっていると感じられる演奏でした。
前回気になった音程の低さは、今回は気になりませんでした。そのために、バイオリンの箱自体がよく鳴り、増幅して豊かな音に聴こえるところが多くありました。音を外したり、かすれたりすることも多く、速いパッセージでは明瞭に聴こえなかったりもしましたが(移弦の調子が悪いのかな、とちらっと思いました)、全体の演奏のドラマチックさを損なうものではありませんでした。あるフレーズをf(フォルテ)とp(ピアノ)で繰り返すところは、どちらもfで弾くことが多く、勢いがありました。
特徴的だなと思ったのは、Sonata IIのAndanteです。下の音が、私は、ゆったりとした心臓の鼓動のような、ぽん、ぽん、という感じが好きなのですが、短めに(スタッカートとまではいきませんが)弾いていて、強い印象を受けました。他にも、踊りの付点のリズムが鋭かったりして、意思の強さが感じられる演奏でした。
70歳目前で、これだけの難曲を弾き切るのは、ものすごい技術と気力と体力がなければできません。本当に素晴らしい演奏でした。
【旦那枠】
今回、駐車場を探すのに手間取り、開演間際の入場となってしまったのですが、なんとチラシが配られていませんでした。最初はサントリーホールの残り公演が少ないからかと思いましたが(所持している方もおられたので)満員御礼だったからだと気が付きました。想定していなかったのでしょうか。チラシの処分には若干抵抗があるのでそれはそれでウェルカムでした。
いつもなら大量のチラシの取捨選択で費やす時間帯の代わりに(手ぶらも何なので)珍しくプログラム(300円)を購入しました。この方が健全ですね。
この中に主催者からの挨拶が挟み込まれていました。
サントリホールの趣旨(ポリシー)としてはプログラムを購入しない輩には挨拶不要ということがはっきり読み取れました。
その中で彼女(御年68歳)の全曲録音は記録だとありましたが、記録ホルダーは別に居るという情報がちらほら。
さて、
急遽中止となってしまったチャリティコンサートだった福岡公演、そしてマネジャーの訃報直後の大阪公演での演奏中断と、不穏な空気のそんな中、東京公演でもやはりハプニングは起こり2曲目Partita IのDouble中に演奏を中断し咳き込んでしまうシーンがありました。
しかし、会場からの「ノープロブレム」という掛け声の通り、今回の中断に不満を感じた方はいないのではないかと思いました。
そもそも観客にしたって、演奏途中に咳をしたり意識を失ったり(睡眠)するわけで、それも一種の演奏中断といえるので、よくあることです。
そう思えるのも演奏内容がよかったからです。
このテンションの演奏を、来年で楽壇デビュー50周年を迎えるということも相まって、生演奏で聴ける幸運を感じた公演だったからです。
それでも、もしかしたら、福岡公演中止の理由が体調不調であることもあり、本調子ではなかったのかもしれません。たとえば熱気味の時にバイオリンをまともな音程やボーイングで弾けるとは思えません。なので少々の不快感を責めるのは酷なもの。
そしてもしかしたら、もしかしたらですが、観客自体が今回これほどの演奏が聴けるとは期待していなかったのではないでしょうか?
たぶんに「彼女の演奏が時間と共にだんだん良くなってきた」とかいう感想が聞かれると思いますが、実は最初から良かったのであって、聴く側の集中力なり、本気度が不足していたのではないかと思います。今回の彼女の演奏を気に入らない人が聞いていたらたぶん最後まで酷いままだという感想もありだと思いました。ただ今回の演奏は不満ではなく賛辞を述べたくなるような演奏だっただけのことだと思います。
実は、CDで聴く限り、あまり好きな演奏でもなく、前回の公演の演奏内容には若干のいらだちも感じたのですが今回のそれで払しょくされました。どうも彼女はその演奏から感じられる強さとは裏腹に、いい人らしいのです(サイン会からの印象です)。そんなこんなもあり全体的に彼女の演奏スタイルが一貫して貫かれていると感じられ「歴史に名を遺す芸術家の一人」であるのだなと思わせられました。
そして、大したことではありませんが、
後ろ側の座席に向かってのみ投げキッスの嵐が飛びまくったのですがその先に誰がいたのかが気になりました。
演奏終了後に落とした肩当の布を拾わないのも格好いいし、当然のように複数枚用意されているところもキャリアなのだと感心しました。
愚痴としては、
今回販売ブースで最新アルバム購入者のみサイン会に参加できるというルールでした。
早くからアルバムを取り寄せ何回も繰り返し聴いてきたファンにはサイン会参加のチャンスが奪われるという主催者側の思惑は、成功?
別に古いアルバムの購入者にも権利があってしかるべきだ!と思うのですが…
大阪公演のチラシでは副題みたいのに「ヴァイオリン界のレジェンド、凄まじき集中力」とあるのですが、レジェンドはともかく凄まじきかどうかは演奏前にうたってしまうのはどうなんでしょうか?
それに、そもそもあまりイメージの良い言葉ではないし… Weblio(学研全訳古語辞典)⇒すさまじ
同じ趣旨の演奏会ですがチラシを見比べてみると面白かったりします(そもそもスケジュールがハード)。
チャリティリサイタルというごろの違和感(一票いれます)からかチャリティコンサートという一言を入れるためにタイトルに変動があり、福岡のコンサート、大阪の演奏会、そしてリサイタル。
福岡公演のチラシ 2017 1/23(月)福岡シンフォニーホール
大阪公演のチラシ 2017 1/25(水) ザ シンフォニーホール
東京公演のチラシ 2017 1/28(土)サントリーホール
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1974年の録音はこれ(リリースは2003年)↓
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