2016年5月29日の庄司紗矢香 vs. CDの庄司紗矢香&その他大勢
公演タイトル | 庄司紗矢香 無伴奏ヴァイオリン・リサイタル |
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比較対象 | 庄司沙矢香 ストラディヴァリウス『レカミエ』 |
公演日時・場所 | 2016年5月29日15時開演 神奈川県立音楽堂 |
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聴き比べ対象の公演はこれです ⇒ 5月29日神奈川県立音楽堂 庄司紗矢香 無伴奏ヴァイオリン・リサイタルのレビュー
(この記事の趣旨はこちら → 一期一会)
2016年5月29日・神奈川県立音楽堂 vs. 2010年8月 ・ランファン・ジェジュ教会/パリ
最初の比較対象は、本人のアルバムの中からバッハのパルティータです。
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世界の庄司紗矢香、MIRARE登場!!
庄司紗矢香の純粋なアプローチによるバッハ&レーガー★16歳のときパガニーニ国際ヴァイオリン・コンクールで日本人初、史上最年少優勝を果たし、世界の注目を集めてきた若きヴァイオリニスト庄司紗矢香。これまでに数々の録音とコンサートでその並はずれた才能を見せつけてきた天才少女が20代後半にさしかかり、より一層成熟したテクニックと表現力を携 えてMIRAREレーベルに初登場します。MIRAREのプロデューサーであるルネ・マルタンが手がける音楽祭「ラ・フォル・ジュルネ」への参加をきっかけに、このアルバムが誕生しました。
収録曲はバッハとレーガーの無伴奏作品。バッハの無伴奏ヴァイオリンのための6曲は数多くの録音が存在しますが、レーガーの作品と組み合わせ、ニ短調の「シャコンヌ」を最後の山場に持ってくるという、極めて考え抜かれた構成となっています。レーガーの無伴奏作品はバッハを範として作曲されていますが、その中にレーガー独自の幻想世界を作り込んでいく高い技巧を必要とされている作品です。庄司紗矢香は抜群のテクニックと安定感、明るい音色で力強くストレートな演奏を披露しています。レーガーの「シャコンヌ」は、作品の本質を真摯に追い求めていき、バッハの無伴奏パルティータ第2番では、高い集中力と深い音楽性を発揮した熱演となっております。
使用楽器は、上野製薬株式会社の上野隆三氏より貸与された1729年製のストラディヴァリウス。(ミッシャ・エルマンが所有・演奏)。
(キングインターナショナル)【収録情報】
CD1:
・レーガー:前奏曲とフーガ ト短調Op.117-2
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのソナタ第1番ト短調BWV1001
・レーガー:前奏曲とフーガ ロ短調Op.117-1
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第1番ロ短調BWV1002
CD2:
・レーガー:シャコンヌ ト短調Op.117-4
・J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ第2番ニ短調BWV1004庄司紗矢香(ヴァイオリン)
録音時期:2010年8月
録音場所:パリ、ランファン・ジェジュ教会
録音方式:デジタル(セッション)
比較しての感想
このアルバムの高い評価は置いといて、このアルバムの録音は、というかこのアルバムは、パリ、ランファン・ジェジュ教会「残響」がパートナーと言えます。
対して神奈川県立音楽堂はパートナーとなりえていません。
そして、庄司彩矢香はその場所の違いに合わせた演奏をしています。
アルバムではその持前の大音量でも小音量でも(強弱ではないです)、明確でクリアな音色をもって残響に引き継がせています。
その試みはレーガーでは大成功・・・話がそれるのでバッハのみに特定します。
この残響系の録音は、聴く側の機材と音量でまるで異なる音楽になるので、批評家の感覚とマッチするかも微妙です。
ためしにヘッドホンとかステレオとかスマホとか、様々な再生機で音量を変えて、いろいろな聴き方をするとその表情は千変万化することを実感できます。
そして、ライブと比較するのでしたらそのライブと同じくらいの音量(迫力)にするのが良いと思います。
ともかく演奏側は強力に残響と戦っていることでしょう。
なので、いつにもまして、天才系の演奏に聞こえますが、実際には無理して作っているような演奏となっています。
対して神奈川県立音楽堂のそれは、だれも助けてくれません。
余韻(残響)も自前でつける必要があります。
そして何よりも、どこの座席で聴いてもさほど音色の違いはなく、そしてちょうど良い音量で、聴いたことになります。
この演奏と、(どういう風に聴いているのか分かったものではない)アルバムの音を比較して、批評をされてしまうわけです。
ジャッジ
演奏された音色は、聞いた目には、アルバムのほうが線が細く鋭利的で、生演奏はどっしりしていた感がありますが、どちらも同じ良い音でした。
演奏そのものは、地を這うパルティータ!、とても普通の曲として聴けてホッとしました(無駄に高いテンションの他者の演奏を聴く機会が多いので)。
ので、生演奏の勝ち!
庄司彩矢香 vs. ペク・ジュヤン 2010年3月15-18日/富山、北アルプス文化センター
内容詳細
韓国の女流ヴァイオリニスト、ペク・ジュヤンが、ユン・イサンからシュニトケ、バルトーク、バッハと、多彩なソロ作品ですばらしい表現力を披露する。どの作品を聴いても彼女特有の表情が聴こえる。ボウイングの濃密さと特徴的なアクセントによって、叙情性と痛切な心の声を聴き手に投げかけてくる。(長)(CDジャーナル データベースより)
このアルバムでは今回の公演プログラムの2曲が収録されています。
- バルトーク:無伴奏ヴァイオリン・ソナタ Sz.117
- J.S.バッハ:無伴奏ヴァイオリン・パルティータ第2番ニ短調 BWV.1004
単独で聴くとなかなかのものであり、若いほど音がまっすぐなので良いのですが・・・
比較するとまだまだ若い
ジャッジ
余裕で庄司彩矢香の勝ち!
庄司彩矢香 vs. ジェルジ・パウク – 17-22 June 1994, Phoenix Studio, Unitarian Church, Budapest
この演奏はamazon primeと NAXOSで聴けます(NAXOSレーベル)。
ベーラ・バルトーク – Béla Bartók (1881-1945)
27:25無伴奏ヴァイオリン・ソナタ BB 124/Sz. 117
Sonata for Solo Violin, Sz. 117
ジェルジ・パウク – Gyorgy Pauk (ヴァイオリン)
録音: 17-22 June 1994, Phoenix Studio, Unitarian Church, Budapest1 シャコンヌのテンポ Tempo di ciaccona
2 フーガ Fuga
3 メロディア Melodia
4 プレスト Prestoジェルジ・パウク(György Pauk, 1936年10月26日 – )はハンガリーのヴァイオリニスト。ブダペストに生まれ、地元の音楽院に学ぶ。ジェノヴァ・パガニーニ国際コンクールやパリ・ロン=ティボー国際コンクール、ドイツ公共放送連盟主催のミュンヘン国際音楽コンクール(ソナタ部門)など、数々のコンクールに入賞した後、1961年よりロンドンに渡る。1962年にロリン・マゼール指揮ロンドン交響楽団と共演して英国デビューを果たす。これによって、ハンガリー・ヴァイオリン楽派の伝統に連なる新星として、ヨゼフ・シゲティやゾルターン・セーケイ、エデ・ザトゥレツキーらの後継者にふさわしい国際的な活動を繰り広げ、ピエール・ブーレーズやベルナルト・ハイティンク、クリストフ・フォン・ドホナーニ、ゲンナジー・ロジェストヴェンスキー、クラウス・テンシュテット、シャルル・デュトワ、レナード・スラットキン、サイモン・ラトルらの指揮者と共演してきた。1971年には、ゲオルク・ショルティ指揮シカゴ交響楽団との共演により、米国デビューも果たした。
レパートリーは幅広く、モーツァルトやシューベルト、ブラームス、バルトーク、ティペットらの作品だけでなく、ヴィトルト・ルトスワフスキやクシシュトフ・ペンデレツキ、アルフレード・シュニトケ、マクスウェル=デイヴィス、ウィリアム・マサイアスらによる現代音楽も含まれている。室内楽奏者としては、ペーター・フランクルやラルフ・キルシュバウム、イェネ・ヤンドーらと共演している。また演奏活動のかたわら、英国王立音楽院やヴィンタートゥーア音楽院において後進の指導に勤しんでいる。 (wiki)
このアルバムはすごい!
sz.117はソロですがアルバムで共演している澤和樹氏はこんな方です。
澤和樹(さわ かずき、Kazuki Sawa、1955年1月5日 – )は、日本のヴァイオリニストである。第10代東京芸術大学学長。旧名は「沢和彦」。夫人はピアニストの蓼沼恵美子(第8代一橋大学学長蓼沼謙一の子)。
近年の活動
東京弦楽合奏団を主宰。東京芸術大学教授。英国王立音楽院名誉会員。紀尾井シンフォニエッタ東京リーダー(2010年4月をもって退任)。響ホール室内合奏団ミュージックアドヴァイザー。千里フィルハーモニア大阪常任指揮者。フォーバルスカラシップ・ストラディヴァリウス・コンクール審査委員。2016年4月より東京芸術大学学長就任(音楽分野からは第3代の福井直俊以来)。
(wiki)
なぜかバルトーク以外では「ちょうちょ」や「さくら」みたいな童謡系の曲にたいしてのテンション高い演奏が楽しめます。
ジャッジ
ジェルジ・パウクさんのこの演奏は、うまいというか弾きこんでいるというか・・・
ジェルジ・パウクさんの勝ち!!
庄司彩矢香 vs. ムローヴァ ヴィクトリア -2007年3月18-19日、2008年10月20-22日 ボルツァーノ(イタリア)
Viktoria Mullova
モスクワ中央音楽学校に学び、モスクワ音楽院にてレオニード・コーガンに師事した。1980年にヘルシンキで行われたシベリウス国際ヴァイオリン・コンクールに優勝し、さらに1982年チャイコフスキー国際コンクールで優勝。その類稀な才能は、世界的に注目を集める。翌1983年の西側への亡命は、大きな話題となった。
この演奏は愛器の、1723年製のストラディヴァリウス「ジュールズ・フォーク」と準バロック様式の弓ではなく、古楽器「グァダニーニ 1750」にガット弦を張り、準バロック様式の弓に教会での録音とのことで、とてもバッハの名手ラシイ演奏に仕上がっています(グァルネリはどうなった?)。
スチール単線が「昭和のブリキ太鼓」に聞こえてしまう私には、ガット弦はとても心地よいのですが、古楽器の演奏ポリシーにはなじめず、実際の演奏もへたくそに聞こえるのでとても残念。
演奏のテンポはムローヴァの演奏よりも庄司さんのほうがゆったり目だったと思うのですが、余韻がない分トータルの時間は短めではないのでしょうか(26分くらい)。
そして、庄司さんは普通の弓なのにも関わらず、重ったるい感じの演奏なのは多分にこの曲の解釈が似ているのではないかと思います。
しかし、終始重ったるいムローヴァにくらべ要所要所で見せる独特のスピード感が独特の世界観を生み出しています。。
行きそびれたのですが2016年5月26日(木)浜離宮朝日ホールで行われた公演はどうだったのでしょうか?
バッハはグァダニーニ、他はストラディヴァリウスと弾き分けての演奏で、今回は休憩を挟まず約90分弾きっぱなしで、なおかつ曲間の拍手禁止!
庄司さんも同じようにしたかったのではないでしょうか?
拍手やブラボーは肝心の演奏を台無しにしている……
ジャッジ
譜面台をのけて、バイオリンを真正面に向けて仁王立ちでの演奏はムローヴァより大きく見えました(2mぐらい)。
そんなこんなでムローヴァのお株を奪うくらいの音量(迫力)を出していました。
ほとんど同点の中、音色の豊かさで庄司さんの勝!!!!
このアルバムには6月12日にヒラリー・ハーンが演奏するBWV1005も収録されているので、併せて予習にもなりました。いわれるまでもないでしょうがこのアルバムはお勧めです。
庄司彩矢香 vs. Walter Rinaldi –2013
Walter Rinaldi
BIOGRAPHY
Walter Rinaldi began studying piano at 7 years old. At 15 he started study of classical guitar and graduated from the Conservatorio San Pietro a Maiella, in Naples, Italy. As a young man he was very moved by British Progressive Rock and by classical music, especially J. S. Bach and the Romantics, and started composing instrumental music for keyboards, piano, bass, and electric, classical, and acoustic guitars.
He studied piano with Maestro Antonio Di Palma and then composition in Rome under the tutelage of Maestro Luciano Pelosi.
このアルバム、奏者も含めあまり詳しく情報が取れませんでした。Walter Rinaldiさんの参加しているアルバムは50枚以上は確認できたのでそれなりの方なのでしょう。
ジャッジ
オルガン曲をジャン=フレデリック・ヌーブルジェ編曲の演奏でした。
ジャン=フレデリック・ヌーブルジェはピアニストでラ・フォル・ジュルネ・オ・ジャポンで聴かれた方も多いのではないでしょうか。
この曲のバイオリンでの演奏は曲調はともかく、和音(重音)がバッハらしく聞こえませんでした。多分に演奏よりも編曲者(ピアニスト)の影響と思われ、重音とかの処理がこなれてないような気がしました。
よって、Walter Rinaldiの勝ち!
結果発表!!
と、いうことで3勝2敗で生演奏の勝ち!!!
勝ち負けより、コンサートホールの後ろよりの座席でバイオリンのザラザラ感を聴けるなんてのは、なかなかお目にかかれないでしょう。
観客全員に届けたかった演奏(音量、音色、迫力)が行き届いた稀有な公演であったということで二重丸です。
今回の比較はあまり役に立たなかった気もするのですが・・・
多分、今回の庄司彩矢香のバッハの演奏は、のちにいろいろ言われるような予感がするのです。
今回の演奏を、テンポが悪いとか、重いとか、響きがないとか、狂気がないとか、あまり好意的ではない、という感想の人がいてもよさそうな微妙な公演でもありました。
これが彼女のやりたかったことなのか、それともちょっとした失敗なのかはぜひとも知りたいところ。
少なくとも、アルバムと同じ演奏などしようものなら聴けたものではない神奈川県立音楽堂での演奏が独立した一つの作品として成立したことは事実です。
今回のツアーでは、他のホールではどのような配慮がなされたのかを知りたい・・・
以上
2016年5月29日の庄司紗矢香 vs. CDの庄司紗矢香&その他大勢
でした