公演タイトル |
酒井茜&マルタ・アルゲリッチ
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公演日時 | 2019年10月1日(火)開演19:00(19:10~21:25) |
会場 | サントリーホール大ホール(東京) |
出演 | 酒井茜 マルタ・アルゲリッチ |
演目 |
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才能と余裕と貫録を見せつけられました。
普通に音楽してました。
彼女の演奏会と比べると、他は発表会レベルでしかないと思えてしまうほどでした。
演奏は真似しろと言って聴かせても難しいところがありますが、その運指?はお手本として参考にできるのではないでしょうか?
「卵を持つように」の一つの回答になると思います。何もしていないのに音が出ている、仙人みたいな感じでした。
たどり着けばこうなるし、たどり着けない方々は「どうでも良いという」とのたまう
演奏の素晴らしさとかカーテンコールの回数とかはここでは触れず、ピアノについて…
明るいニュースとして、酒井茜が使用していた椅子!
これが折り畳み可能で持ち運びも可能な軽量コンパクトピアノスツールでした。
見た目は薄い座面に四本の調節可能な脚が生えているだけ。脚はカメラの三脚のように伸縮可能でした。
以前ラフォルジュルネでエフゲニ・ボジャノフと酒井茜の競演の時に、ボジャノフはマイチェアの背もたれ付ではなくFAZIOLI特製のものを利用しており、酒井茜はパイプ椅子だったという記事を目にしたことがありますが、その時からすでにご愛用だったのかもしれません。
一見貧弱そうに見えたのですがピアノ演奏という過酷な環境に耐えうる強靭さを兼ね備えているのでしょう。
そのうち街中で、背中にこの椅子を背負って移動するピアニストが現れるかもです。
それなりに装飾もされていて見分けはつくのでググってみましたが見つかりませんでした。
遠目からですが座面が青で、脚はピアノフィニッシュの黒に金色の装飾が入っているように見えました。
サントリーホールと2台のピアノの音響について
ピアノはてっきりKawai(Shigeru kawai SK-7 or Kawai SK-EX?)が使われているのだと思っていました。
が、アルゲリッチのはどう聴いても見てもスタインウェイ(Steinway & Sons)だし、酒井茜のは響版が明るい色なのでKawaiなのだとすると響版の構造がSK-EXとは全然違っていることもあり、結局なんだかわかりませんでした。音色的にはアルゲリッチがスタインウェイ、酒井茜はカワイ鳴りっポイような気がしますがやっぱりスタインウェイだと予想しておきます。(今回幕間に撮影OK?だったこともあり,ステージ前まで確認しに来ていた方が多数おりました。教えてくれると幸いです。)
両方カワイだとしたらすごいことです。カワイのピアノは奏者を選ぶと言われて久しいですが、今回のこのドラマチックな演奏はピアノの違いによるものなのか奏者の違いだけなのか?が、カワイを聴く機会が少なすぎて分かりません。
スタインウェイD-274とKawai SK-EXの響版はフルコピーなのではと思うほど似ているし…
しかし、今回打鍵固有の木魚の音は圧倒的に目立ちませんでした。
ちなみに、なぜサントリーホールは木魚といわれるかというと、打鍵音は一定の音程なので定在化しやすいのと、残響が連続ではなくポポンなどの理由です。どこのホールでも鳴っているのですが特定しにくかったりします。ピアノの音で鳥肌が立つ系の方はこれに反応していると思われ…
それはさておき、
お互いが対面できるようなお馴染みのセッティングですが、この状態でのそれぞれのピアノが発する調は、音響的には同条件ではなく視聴者にも異なった調が届きます。
最初の曲は1台のピアノで連弾でしたが、これはこれで1台だけでセッティングされている時と比べて若干異なる点があります。
特に今回ー部と二部で演者の位置が入れ替わり、そして自分用に整音されたピアノなので奏者の位置とともにピアノも入れかえも行われました。聴く側の着席位置による音質の違いではなく、演者やピアノの位置が変わることでの音質変化を確認できたのです。これはめったに出会えることではありません。
パターンとしては、それぞれの大屋根の無し有り、設置場所の上手下手の入れ替え、連弾時の着座位置の入れ替えがありました。
加えて今回の2台のピアノはアルゲリッチのピアノに比べ酒井のピアノは少し明るく、新しい絃のような鳴りでした。これはお気に入りの音が異なるのか、同じ条件のピアノを用意できなかったのか、会場と同時にホール内には入れず15分ほど待たされたこと関係があるか、は不明です。
見た目の違いから音響的にも違うことが想像できます。向い合せ・対面の時は下手のピアノの大屋根が全開か半開なのに対し、上手のピアノの大屋根は取り外されます。上手のピアノが仕方がないのであれば下手もそれに合わせればよいのにそうはしていません。大屋根の開度でよく説明される「音量コントロール」というのが片手落ちなことが分かります。総音量のコントロールというよりは反射音と直接音のコントロール、あるいは指向性のコントロールととらえるほうが現実的で残響や明瞭度がこれでコントロールできたりします。そのため主旋律を受け持ったりメインのピアノパートを下手で演奏すると効果的だったりします。それらを考慮しないのであれば総音量の大きい上手でメインパートが演奏するほうが効率的でしょう。ならば上手の大屋根を全閉にすればどうだというと、ほとんどお目にかかりません。これは多分音が濁ってしまい下手のピアノの音が聴きにくくなってしまうからではないでしょうか?
サントリーホールの場合シューボックス型に比べ近距離での反響バランスは最悪です。
特に大屋根を外してしまうと着座位置によって上手はポンと一音発生してもポポンと聞こえてしまう傾向が強まります。
そしてポポンと聞こえるホールの場合は、定在波もどこかにできてしまう傾向にあるのですが、今回下手のピアノはソロの時よりも若干より下手側に配置されていたのですが、定在波が目立たなくなっています。これはそもそもの設計か、設置の定位置が割と残念な位置に落ち着いてしまっているということが言えると思います。セリに乗せるのが嫌なのであれば、下手側に少しずらしてでも前側に移動すると改善されるような気がします(数字的な根拠ありません)。
片やポン、片やポポンなわけですから下手な合奏状態でもありバランスは良いとは言えず、連弾に比べると悪い意味での広がりを醸し出したりしていました。音色的には酒井茜のほうが安物のピアノのような音に聞こえましたが、要因がピアノなのかホールなのかは不明です。対してアルゲリッチのピアノがとても良い状態で響いていたのが整音のせいかそもそものピアノの特性かそれとも演奏技術なのかも不明です。
今回、着席位置限定ですが、ものすごく貴重な情報が得られたわけです。
こういう機会を音響設計さんとか調律師さんとか批評家さんとかが見逃さずに活用すると未来は明るいのですが…
ピアノ台をつかうとか数センチ単位での設置場所を変えてみるとかで良くなりそうなのですが。
いまさらですが、オケには当てはまるわけもないピアノや打楽器系のソロでの話です。
チラシは⇒酒井茜&マルタ・アルゲリッチ ピアノ・デュオ・リサイタル
春の祭典はこちら
2014年のルガーノはこちら
ちなみにamazon unlimitedではsakaiakaneの演奏は提供されておらず、NAXOSではルガーノ・フェステバルの2006年、2008年、2014年が視聴できました。