チョン・キョンファ
ヴァイオリン・リサイタル
Kyung-Wha Chung (vn), Kevin Kenner (pf)
日時:2013年6月3日(月)19:00〜
場所:東京文化会館 大ホール
真っ白のドレスをまとってステージに現れたチョン・キョンファ。
思っていたよりずっと小柄なことに、まず驚きました。
弓の張り具合を確かめ、
観客席を見渡し、知り合いがいたかのように微笑んで、
ふっと力を抜くように、でも背筋を伸ばして弾く体勢を整えます。
1曲目はモーツァルトのヴァイオリン・ソナタ。
ピアノとのユニゾン、ほぼ対等な掛け合いが面白い曲です。
出だしは、空気がまだほぐれていない感じで、
失礼ながら音の響きは「あれ? こんなものなのかな?」と思ってしまいました。
ところが。
2曲目のブラームス、休憩を挟んでの後半は、どんどん響きが冴え渡り、
胸がいっぱいになるような素晴らしい演奏でした。
チョン・キョンファの演奏を生で聞くのは初めてだったのですが、
「毅然」という言葉がしっくりくる感じがしました。
特に盛り上がるところではキリッと格好良く歌い上げ、
叙情的なところは情感豊かで、そのコントラストがとてもたまりませんでした。
全身で音を出すような弾き方も印象的で、
時に小さいジャンプをしたり、ダンスをするように体を動かしたり、
小柄なはずの体が、とても大きく感じられました。
弓先を弾く時、小指が弓から離れるのは、腕が短い(体が小さい)せいでしょうか。
私も小指が離れがちで先生によく注意されますが、
しっかり腕の重みを乗せて弾けば、これほどいい音が出るんだと、勉強になりました。
今日はピアノも最高でした。
チョン・キョンファのコンサートは、来週11日(火)も行く予定です。
今度は大好きなBachのシャコンヌも弾くので、今から待ち遠しいです。
それより前に、明日のアンネ=ゾフィー・ムターの予習をしなきゃ。
☆彼女と庄司紗矢香は演奏中に何かが見えるらしい。
庄司紗矢香は一点ですが彼女はそこらじゅうに見えるようです。
ロックやアイドル系のコンサートとは違い、
クラシックでは最前列はあまり上等な席とは言えません。
それでも指使いを見たい二人は取れたら最前列を予約します。
そんな最前列での特別な楽しみ方を紹介します。
まず表情がよく見えます。
今回彼女の姿を間近で見れたことはとてもラッキーでした。
特に演奏中ではなく曲のあいだに見せる様々な表情は、それだけで胸がいっぱいになるくらいの重みを感じました。
指先がよく見えます。
見たからといって、その分上達するわけでもないのですが、気分は同じように弾ける気になります。
ピアノの音
今回の東京文化会館大ホールではピアノ位置が一般的な位置より前よりでした。
その結果、ピアノの下方に広がる音が上部からの音よりたくさん届きました。
ピアノの音の善し悪しは、一般的に上部からの音のみしか触れられませんが、実は下部からの音の方がよりピアノらしい音が出ています。
木材の音や床の音の影響を受けるため癖がありますが、大変温かみのある音が出ています。
最近のオンマイク気味の録音ではほとんど無視される音がここに含まれています。
逆にオフマイクの場合、ピアノではなく床にマイクを向ける場合もあります。
ピアノとは別にバスパート(コントラバスなど)がいない場合は、とてもバランスが良くなります。
今回、ショパンコンクールの覇者でもあるケヴィン・ケナーの演奏をこの位置で聞けたことは、それはそれでラッキーなことでした。
録音技師でもまるまるこの音を聴き続けることはないでしょう。
バイオリンの音
これは座席の場所によりますが、バランスが悪い場合があります。
バイオリンの響きが「木材のバルサの音」みたいな響きが強調される場合があります。
今回は響きとダイナミクスは少なくなっていましたが、とても良い音がしていました。
あと弱音や指板に触れる音や「弓の鼻息」とかまで聞こえます。
チョン・キョンファの演奏そのものの感想は、次回を聞いてからにします。
ある意味リアルな 衝撃の東京ライヴ第1夜 でした。
プログラム:
Mozart: ヴァイオリン・ソナタ ホ短調 K304
Brahms: ヴァイオリン・ソナタ第1番 ト短調 Op78
Szymanowski: 夜想曲とタランテラ
Franck: ヴァイオリン・ソナタ イ長調
アンコール:
Elgar: 愛の挨拶
Kreisler: ベートーヴェンの主題によるロンディーノ